「……ごめん、」
旺太くんの声が降ってくると同時に、ふわりと柔らかいものが頭を覆う。
恐怖と安堵感とが入り混じり、涙を止められずにいるあたしの頭に、そっと乗せられた。
それがタオルだと理解できたのは、数秒後のこと。
「かかったよな」
申し訳なさそうに言うから、首を横に大きく振った。
先輩と比べたら、全然。全く。
「これ、」
「……え、」
「汚れてない…と、思う。濡れたままよりは、いいと思って。Tシャツは、使ってないし」
どこかぶっきらぼうにそう言うと、目の前の公衆トイレに視線を移した。
差し出されたのは、旺太くんのジャージだった。
濡れたのなんて、襟と、袖口くらいだ。
これくらい、大したことない。
「……だ、…大丈夫。平気」
「風邪引くといけないから」
「…でも」
「使って」
「……うん。……あ、りがと、う」
ジャージを受け取ったけれど、一歩踏み出すことができない。
着替えを済ませて出てくるまで、待っててくれたりしないかな。
なんて。
助けてもらった上に、そんな都合のいいことを考えてしまった。
だって、まだ怖いんだもん。
この場所にひとり取り残されるのは、怖い。



