こんなヤツのことが好きだったなんて。
バカみたい。
嫌い。大嫌い。
全部、全部なかったことにしたい。
「はな、して…っ」
掴まれた左手を力いっぱいに振り、空いてる右手で先輩を叩く。
無駄な抵抗。
チラつくその言葉を払い落とすように、力いっぱい右手を振り回した。
「……っ、」
指先に感じた、肌の感触。
見ると、先輩が左の目の上を手でおさえていた。
「いってぇ、なぁっ」
殴られる。
そう思ったあたしは歯を食いしばり、ぎゅっと目をつぶった。
やってくるであろう痛みを想像して、全身に力を入れた。
「うわっ」
「きゃあっ」
でも。
覚悟していた痛みではなかった。
ギュッと、体が一瞬にして固まるほど。
「つ…めてぇ、」
「……っ、」
何が起こったのかわからなかった。
びっくりして縮んだ心臓が、その反動でドクンドクンと大きく動く。
「な、に…、なにすんだよっ」
怒鳴る先輩の、その視線の先を見ると。
「おう……た、く……」
なんで旺太くんが、ここに……。



