「あと、それ。俺のじゃない」
俯いたあたしの上に降ってきた声。
旺太くんを見上げると、旺太くんの視線がテーブルの上に置かれたボトルに向けられていることに気づく。
「あいつの」
その言葉のあとで向けられた、旺太くんの視線の先にいる彼女。
瞬きをひとつしたあと、花開くように微笑んだ。
……あぁ、そっか。そうだったんだ。
ガツンと頭に何かが落ちてきた衝撃を、実際には経験したことはない。けど、きっとこんな感じなんだと思う。
「ごちそうさま」
そう残した旺太くんの足音が遠ざかっていく。
黙ったままテーブルの上のボトルを見つめているだけのあたしを、旺太くんはチラリとでも目にしただろうか。
「……華乃、」
あたしを呼ぶ和葉の声が、いつもより優しく響いた。
それが目の奥をチクチクと刺激する。
ここでは泣かない。泣くもんか。
「………ごめん。先、帰っ、」
スクールバッグを掴み、店を出た。
今すぐ吐き出したい。その一心で。
「うっ……、うぅっ…」
駆け込んだのは、駅のトイレ。
ガラガラと、トイレットペーパーを勢いよく巻き取る音が響く。
乱れた呼吸を正常に戻すには、まだまだ時間がかかりそうだ。
まだ、はじまってもいないくせに。
想いを伝えてもいないくせに。
終わってしまった。
苦しくて、苦しくて。どれだけ泣いても、涙は次から次へと湧いてくる。



