旺太くんと向かい合って座る。
ドーナツはいらない、と言った旺太くんの前で大きな口は開けられない。
保護者役を買って出た和葉も、本物の旺太くんを目の前にして緊張してしまっている。
お皿の上のドーナツに手を伸ばすこともせず、ストローの入っていた袋を指に巻きつけながらチラチラと様子を伺っていた。
「あの……。いつも、あんな感じですか?」
旺太くんがカップを置くのを待って和葉が口を開いた。
「あんな感じ?」
「いつも誰かに見られてるっていうか」
校門付近の人口密度がいつもより高かったのは、旺太くんが原因だった。
女子生徒たちは、彼の放つオーラに一瞬にして包み込まれて、身動きが取れなくなってしまったんだ。
「自分の学校に他校の生徒がいたら、俺だって気になって見ると思うけど」
椅子に深く腰掛けた旺太くんが、ちょっぴり首を傾げて見せる。
ただそれだけの仕草にも、あたしの心臓は素直に反応してしまう。
和葉だってきっと、ときめいたはず。
「で?そっちは、なんで黙ったまま?」
「……え?」
「こんなところまで連れてきておいて、ずっと黙ってる」
「あ……」
体が一気に熱くなる。
痛いところを突かれてしまった。
旺太くんに見つめられると、余計に言葉に詰まってしまう。
話したいこと、訊きたいことはたくさんあるはずなのに。
ヘアスタイルを変えたあたしは、もっと自信を持っていいはずなのに。



