胸の奥がざわざわと騒がしい。
こんなときは決まって呼吸が浅くなる。
酸素を送り込まないと。
そう思って大きく息を吸い込んだとき、あたしの中でなにかが弾けた。
心拍数が一気に上がる。
「まっ、て……!」
旺太くんを追いかけて、彼のブレザーの裾を掴んで引きとめた。
心臓がドクドクと勢いよく血液を送り出す。
カァッと熱くなった頬を、冷たい風がひと撫でしていった。
ごくん、と空気を呑み込んで覚悟を決める。
「お礼に、なにか。……あ、甘いものは、好きですかっ?」
その言葉を口にするまでに、時間はかからなかったと思う。
ハンカチ一枚で、旺太くんとあたしの間に細い繋がりができたんだ。
その細くて頼りない繋がりを切ってしまうのはもったいない。
このきっかけを手放すわけにはいかない。
「ドーナツ!食べましょう!!」
旺太くんの唇が、「え」のかたちで止まる。
周囲のことなんて気にもならない。
和葉の存在ですら忘れていた。
あたしの目に映るのは、旺太くんただひとり。
のぼせたみたいに頭がぼうっとしてる。
言葉をうまく並べることはできたのだろうか。
何を言ったのか記憶には残っていないけれど、旺太くんが諦めたように小さく頷いた。



