ラブホリック。



旺太くんが無言で差し出したそれに視線を落とす。
見覚えのある柄。
あたしの持っているハンカチと同じ柄だ。

旺太くんは、ぽかんと口を開けたあたしの手を取ると、中途半端に開いたその手にハンカチを握らせた。

「え…?」
「返したから」

あたしに背を向ける旺太くん。
渡されたハンカチを握りしめ、慌ててそのあとを追った。


「ちょっと、待って!あのっ…、せっ、説明を!このハンカチっ…、なんで?」

旺太くんの前にまわり込み進路を妨害する。
あたしを見下ろすと、ちょっぴり不機嫌そうな表情をして息を吐き出した。

「説明したけど。聞いてなかった?」
「………ごめんなさい」

旺太くんの突然の出現に驚いて、耳に入ってこなかったんだ。

「トモ兄に頼まれた。あんたの忘れ物。なんで俺が届けなくちゃいけないのか、意味がわからないけど」

きっと、さっきと一字一句違わないんだろうな、ってセリフを淡々と言ったあと、あたしの横を通り過ぎる。

「えっ?……それだけ!?」

それ以外に一体なにがあるというのだろう。
冷静に考えたら、あたしに会いに来る理由なんてそれくらいのものだ。
でも。
たったこれだけ。
一枚のハンカチを渡すためだけに、ここに来てくれた。
あたしを捜して、あたしを待っていてくれた。

「あっ、……ありがとうっ!」

そう投げかけたって旺太くんは振り向きもしない。