「あのぉ、すみません。……もう、いいです。美術部の子に描いてもらって、今度それを持ってきます。というか、持ってきてもいいですか?」
立ち上がったあたしはモジモジしながらノートを返してくれるよう頼んだ。
「どれどれ?」
さっきから、というか。
ここに足を踏み入れたときから気にはなっていた。
赤い椅子に腰掛けた大学生らしき女の子の髪を丁寧にブローしている男の人。
背が高くて、チラチラと見た横顔も悪くない。
想像で言うならば。
ものすごく優しくて。
ものすごくいいにおいがして。
お姉さんとなにやらいい感じ、の人。
そんなお兄さんが、大学生らしき女の子をお見送りしたあと、ハマダの肩に手を置き、ノートを覗き込んでひとこと。
「これ、オウタじゃん」
……え?
…えぇっ!?
マジですか!!
本日二回目、ですけど。
千穂に続き、ここにも希望を与えてくれる人がいたなんて。
……キセキ、だ。
奇跡としか言いようがない。
まったく信じてない様子のハマダが再びお姉さんの手元を覗き込む。
「マジっすか?これが、あのオウタくん!?」



