ラブホリック。

***


この扉を開けたら、なにかが変わる。
そう思ったら、のどがゴクリと音を立てた。


『駅の近くにある美容院に入っていくところを見たよ。一週間くらい前、だったかな』

千穂が、あたしの描いた王子様を指さしてそう言った。

『まちがいないよ。この人だった』

そう言ったんだ。


「……よしっ」

小さく気合いを入れたあたしは、古びた、……アンティークとでも言うべき?金色の丸いドアノブに手をかけた。

白い壁。大きな鏡。赤い椅子。こげ茶色の床。
目に飛び込んできた扉の向こう側の世界を、ぼんやりとしか捉えていない。
ここの内装がどんなだか、そんなのはどうでもよくて。
ここに、王子様を知る人がいるのだろうか。
それしか頭になかった。


「こんにちは」

あたしが足を踏み入れると、女の人が笑顔で近づいてきた。

うわぁ。
きれいなひと。

ミルクティーブラウンの、肩より少し長めの髪。
長い睫毛と、濁りのないうすいピンクの唇。
大きめの白いシャツと、パールのピアス。
ほっそりとした指には華奢なゴールドの指輪。

物足りないというのではなくて。
無駄がない、というべきだ。
下手に飾りつけたりしない。
それがとてもしっくりきていて、素敵なのだと思った。