もし、変なうわさを流されたらどうしよう。彼はクラスの中心人物で人望も厚く、みんなすぐに彼の話を信じるだろう。地味で目立たない存在の私が彼に太刀打ちできるはずがない。そんなことを頭の中で考えてしまいアワアワしていると、
「フハッ」
という彼が息を吹き出す音が聞こえた。
「もうだめ、我慢できない。アハハハハハ」
彼の大きな笑い声が廊下に響き渡り、近くを歩いていた人達が驚いたようにこっちを見ている。
「あの…」
何が何だか訳が分からず声をかけると彼は笑いすぎて目尻に溜まった涙を拭いながら
「佐野さん、おもしろすぎ」
と言った。
「へっ?」
今までおもしろいなど1度も言われたことがなかったのでどう反応したらいいのか全く分からなかった。
「は~。笑った!笑った!ってことで佐野さん、今日から友達ね」
彼は手を花穂に差し出しながら満面の笑みを浮かべてそう言った。