「わっ!ごめんなさい!」
「いえ、こちらこそ!」
静かな図書室に2人の声が響く。カウンターで作業をしていた先生が咎めるような目で
ちらっとこちらを見た。申し訳なく思い肩を縮こまらせ下を向いた。
「えっと、佐野さんもこの本好きなの?」
先生の目線に気づいていないのか、頭上から明るい声が降ってきて顔を上げると同じクラスの辻本そうた君がなぜか嬉しそうな顔でこちらを見ていた。
「えっ?うん」
突然の質問に驚きながらとりあえずうなずくと、辻本君はまるで宝物を見つけたかのように目をキラキラ輝かせ
「僕も好き!おもしろいよねこの本!」
と先程よりも大きな声で話すので思わず人指し指を口に当て
「シー!」
と口に出した。