更新中〜時渡りの少女と浅葱色の仲間達〜

私は一つ感じたことがあった

服装ってこのままいいのかな?

陽「あのぉ…、服装ってこのままでいいんですか?」

あっと沖田さんは声を上げた

沖「待っててください」

正座して待っていると 沖田さんは何着か袴をくれた

沖「これは平助の御下がりです。今はこれで許してくださいね」

そう言って稽古に行ってしまった

陽「後で藤堂さんにお礼を言って来ようっと。あっ…これどうやって着るんだろ?」

聞けばよかった……

これ勝手な後悔だよね

んん…

どうしたらいいんだろ…

私は短い生涯一度も着たことがない(七五三は別として)

まぁ…

何とかなるでしょっ

後で土方さんあたりに見てもらえばいいか

着終わると 誰にも見られないように土方さんの部屋に向かう

当たり前だが ちゃんと返事を待つ

陽「土方さん、用事があって来ました」

入れ と言われたので入った

土「どうし…フッ、オメェは死人か何かかを真似したのか?」

シニン…しにん…死人

なんて酷いことを言うの

知らないのに…

土「まぁそんな怒んなって。知らねぇのはわかったから」

私はぷくぅと頬を膨らます

土「お前の事だから、どうせ教えてもらいに来たんだろ?」

私ってこんなに解りやすいのかな

土方さんはクルッと向きを変え 私に近づいてきた

そして袴を脱ぐように言われた

私は戸惑いつつ脱ぐ

土「これをこうやって、これをこっち。んでこうやって…ほら覚えたか?」

全然違うことやってたな

よし覚えた

陽「やっぱりこういうの、得意なんですね。こういうの」

少し嫌味を言う

大事なことは2回言うって言うしね

土「いつまで引きずっているんだ、オメェは。嫌味言ってねぇでさっさと出ていくか、鉄と稽古しとけ」

鉄君と稽古したいけど…

何処で稽古するの?

こんなところでやってもすぐにバレるし…

土「鉄、平助といつもの所に稽古しに連れてってやれ」

いつもどこにいるのか分かんないけど すぐにやって来る

鉄「はい。陽翔君、藤堂さんを呼んでくるから門の前で待って」

私は未来ちゃんの竹刀を持ち門の前で待つ

動きにくいし…

なにより袴が凄く重たいんだけど…

藤「陽翔〜おまたせ。行こうぜ」

藤堂さんは手を振っているので 私はペコリと頭を下げる

藤「鉄も久しぶりに試合しような」

小柄な藤堂さんでも私より全然高い

私は二人の後ろを歩く

どこに行くのかなぁ?

キョロキョロしていると 色んな町娘が集まってきた

娘1「あの男子たちかっこええね」

娘2「私おぶしたいわ(お茶したい)」

娘3「後ろの男子かわええわ」

私の周りは女の子でいっぱいになった

周りはきゃーきゃーと言う声が響く

この時はまだ気づいていなかった

私がこんなにモテさ事に…

藤「いいか、走るぞ」

私は藤堂さんと鉄君に手を繋がれ 女の子達から逃げる

二人共とっても足が速いため 直ぐに見えなくなっていた

藤「ここだよ陽翔、いい場所だろ」

ここ知ってる

私が初めて来たところだ

町全体が見渡せるし 大きな桜の木周りは青々とした草原が広がっている

陽「良いところですね~。僕好きだな」

私は手を広げて自然を感じる

この時代に来てなければ こんな体験出来なかっただろう

藤「始めるか、鉄はいつものやってて。陽翔はまず素振りを100回」

百回ぃ…

おかしい…

人間の域を絶対超えてるって

でも…

こういう時こそポジティブシンキング

百回なんて誰でも出来る

きっと律君達も出来てた

私は風の音を感じながら振っていく

ヒュンヒュンと風を切る音が心地良い

……………………………………89…90……

陽「………ひゃーくっ」

息絶え絶えになりながらも百回を終える


藤「すげぇじゃん陽翔、今から俺と鉄が試合をするからよく見てて。きっと陽翔に役に立つことが沢山あるから」

私に役に立つ?

陽「はいっ、見ときます」

私は木陰に入り試合を見る

二人の試合はとってもスピーディーで 素人の私は動きに追いつく事が難しい

そして鉄君は追い詰められ一歩下がり 参りましたと頭を下げる

すごい試合だった

初めてこんなに早い動き見た

この試合で多く使われていたのが…

陽「……とっても早い動き…、ですか?」

私は自身無さ気に言うと 藤堂さんはこくこくと頷き鉄君はパチパチと手を叩いた

藤「一つは言った通り『素早い動き』あと1つあるんだけど」

素早い動き以外って言われても…

藤「えっと…陽翔は『型破りの技』を沢山習得したほうが良いと思うんだ。だから自分で型破りの技を生み出してほしい」

自分で……

てか型破りの技を沢山習得していいの?

基本通りにやらなくていいの?

素朴な疑問が頭をよぎる

鉄「いいんだよ。僕も刀は持たせてもらえてないけど、木刀で対応できるような技を沢山生み出した本人だし…。陽翔は型破りの技を覚えた方が、刀を持っている人にも対応できると思うよ」

陽「もしかして…僕を倒した技って…」

ニコッとしているため 自作なんだと悟る

藤「まぁ、これからの陽翔の練習がわかったわけだし。鉄、あそこ行っていい?」

鉄君は嬉しそうだ

藤堂さんはずんずんと先に進んでいく

暫くすると 綺麗な桜の木が沢山ある所にやってきた

キャンキャンと可愛らしい鳴き声が聞こえてくる

藤・鉄「さくら」

ん?

犬が駆け寄ってくる

…まだ子犬の柴犬じゃない?

か…可愛ぇぇぇぇ

藤「さくら、元気にした?ほら餌だよ」

おにぎりをさくらちゃんに渡す

さくらちゃんは勢いよくがっつく

尻尾をフリフリとさせて鉄くんに近づく

鉄「さくらっ」

鉄君はさくらと走り回っていて 藤堂さんは何やら小屋みたいなのをいじっている

鉄君はさくらちゃんを抱えてこっちに来た

さくらちゃんは私に近くと ぺろぺろと舐めてくる

陽「ひゃっ、くすぐったいよぉ。さくらちゃん」

さくらちゃんは手を舐めるのをやめて 顔を舐めてきた

なんて可愛いのっ

藤「おっと…、もう帰らないと。さくらまた明日な」

クーンクーンと寂しそうな声を漏らす

連れて帰れないのだろうか

鉄「さくら、またね」

鉄くんも手を振る

私も手を振り 二人を追いかける

藤「この事は3人だけの内緒な」

そう言うといたずらっ子みたいに笑った

鉄くんも普段からは考えられない 可愛らしい笑顔を見せた

陽「分かりました。さくらちゃんとっても可愛いですね、屯所に連れて帰れないんですか?」

私は藤堂さんたちに聞く

藤「あぁ…ぱっつぁんが犬が駄目なんだよ。くしゃみが止まんないとか言ってた」

あっ……

アレルギーなのね

陽「それは大変ですね、連れて帰ると永倉さんが大変な目に会いますしね…」

犬アレルギーの人ってなんか可愛そう

藤「やっば、土方さんがもっと鬼になる 陽翔、鉄、急ぐよ」

藤堂さんってむっちゃ足速いよね

幹部1速いんじゃないかな?

そんなことを考えながら屯所に帰る

初訓練にしては上出来と言われ 少し嬉しくなった

それと同時に 私は藤堂さんの可愛らしいヒミツを知った