聖なる夜に、始まる恋

手を繋いで、ゆっくりと歩いて行くと、やがてお目当ての湯畑が見えてくる。雪に包まれた景色の中から立ち込める湯煙。その光景を、ライトアップが鮮やかに彩っている。


「綺麗・・・。」


思わず声を漏らすと


「これで、雪がチラついていたりしたら、最高なんだが。」


秀が柄にもないことを言い出す。


「そうだね。」


でも私は素直に頷くと、身体をそっと秀に寄せる。


「京香・・・。」


驚いたように私を見る秀に


「覚えてる?」


私は彼を見上げて、尋ねる。


「子供の頃、お互いの家族と一緒にここにお泊りしたよね。」


「ああ。」


「あの時はクリスマスじゃなかったけど、やっぱりカップルが周りに結構いてさ。私も大きくなったら、彼氏とあんなふうにここで寄り添って、この景色見たいなぁって思った。」


「マジかよ?あの時、俺達まだ、小学生だったろ?」


「女子はませてるんだよ。」


「なるほど、な・・。」


「まして今日はクリスマスイブ。恋人たちの聖夜に夢が叶って最高の気分。でもあの頃の自分に、その夢、ちゃんと叶うよ。お相手は、今あなたの横にいる幼なじみだよって言っても、たぶん冗談言わないでよって、絶対本気にしないだろうな。」


私はそう言って笑い掛けると、ビックリしたように私を見る秀。


「秀はそそっかしいな。」


「えっ?」


「ちょっと注意すれば、マーティの左手の指輪にくらい、すぐに気がつくでしょ。」


「・・・。」


「昨日だって、クリスマス休暇の旅行のついでに、私の家に挨拶に寄ってくれただけ。これから私をサポ-トさせてもらいますって。それをあんな血相変えてさ・・・バカじゃないの?」


「すまん・・・。」


私の言葉にしょげる秀。さすがにちょっと言い過ぎたかな・・・。


「でも私も同じか。」


「えっ?」


「なんで私が帰国した時に、わざわざ秀が出迎えてくれたのか?ちょっと考えればわかりそうなものよね。私があそこまで鈍感じゃなきゃ、こんなに話がこじれないで済んだんだよね・・・。」


それは素直に認めるしかない。


「でもさ、あんたが私に、そんな気持ちを抱いてくれてるなんて、正直思ってもみたことなかったから・・・。同情?」


「最初はそうだったかもしれねぇ。でも・・・2年の間に本気になった。」


そう言って秀は、暖かな笑顔をくれた。