聖なる夜に、始まる恋

当たり前のように、後部座席に乗り込んで来たマーティとブロンド美人を交えて、途中食事休憩も交えて走ること約2時間。同じ県とは思えないくらいに雪深くなった温泉地に着いた頃には、そろそろ陽は西に傾こうとしていた。


指定された旅館の正面玄関に車を止めると


「本当に快適なドライブだった、京香、それに秀、ありがとう。感謝します。」


マ-ティはそう言うと美人と一緒に頭を下げ、車を降りた。


「じゃマーティ、ジェーン。いいクリスマスを。」


車の中から声を掛けた京香に


「ありがとう。君たちもね。」


「うん、じゃまた。」


俺達にもう1度頭を下げて、2人は仲睦まじく、旅館に入って行く。


「素敵なクリスマスナイトを日本の温泉旅館で奥さんにプレゼントするなんて、マーティもやるよね。」


「・・・。」


「さすがに昨日の今日じゃ、どこも満室だったから、私たちは帰るしかないよ。でも、湯畑くらい見て帰ろうよ。いいでしょ?」


「あ、ああ・・・。」


「じゃ、出発。よろしくね。」


京香の笑顔に戸惑いながら、でも俺はまた車をスタ-トさせる。


ジェ-ンは全く日本語がわからないようで、3人の会話は英語。京香の英会話力にも驚かせられたが、俺は当然ちんぷんかんぷん。でもずっと仲間外れにされていたわけでもなく、日本語でも会話があったから、少しずつ状況はつかめて来た。


マ-ティとジェーンは夫婦で、日頃ビジネスマンとして飛び回っていて、ジェーンに寂しい思いをさせているマーティが、クリスマス休暇を一緒に過ごそうと奥さん孝行の為に来日したのだそうだ。


「子供の頃、パパとママに連れられて見た、あの温泉の雪景色が忘れられなくて、どうしても妻に見せたくて。京香にお願いして、オススメの旅館を手配してもらったんですよ。」


マ-ティはそう言って笑った。


車を駐車場に入れ、俺達は雪道を歩く。


「ちょっと。」


歩き出してすぐに、京香が呼び止めて来る。


「うん?」


「なにひとりで先に行こうとしてるのよ。」


「えっ?」


「ここでエスコ-トしなかったら、いつエスコ-トしてくれるのよ。」


なんて言いながら、ややむくれ気味の京香。


「はい。」


と言って差し出された手を、俺は慌てて握る。


「よし、行こ。」


そう言った京香の笑顔がとてつもなく可愛かった。