“よかったな、すず”


メッセージで初めてわたしのことを“すず”と呼んでくれた。

きっとこれからもそう呼んでくれる、そう思ってた。


でも――

翔哉くんのわたしへの態度は今までと変わらない。



「翔哉、もう行くの?」

「今日朝練あるから」


同じ家にいるのに、一度も目が合わなかった。

あれは翔哉くんの気まぐれだったのかな。


あんなに優しいメッセージをくれた彼とは、まるで別人みたい。

だから、一度も名前で呼ばれなかった。


期待していた自分が、少し恥ずかしい。




教室でもいつもと変わらない日常が待っていた。