赤いペンキはもちろん用意していた。
ただクラスで買ったものではなくて、他のクラスが使わなくなったペンキを使わせてもらっていた。
そのペンキももうなくなっていて、数人が頭を抱えている。
「まだお金余ってる?」
「うん、ペンキくらいなら買えると思う」
「じゃあ、ペンキ買ってこようぜ」
作業をしながら、だんだんと雲行きが怪しくなっていった。
嫌な予感というのは、だいたい当たってしまうんだ。
「のーのーむーらー」
「野々村さーん」
ペンキを買おうと言い出した人たちが、口をそろえてわたしの名前を呼ぶ。
こうなると思った。
きっとわたしに仕事がふられるって。
「赤いペンキ買ってきて」
「今日中に終わらせないといけないから、ダッシュでよろしく」