「私が、選びたい家政夫は…」


言葉尻を濁しながら、自分の選択を待っている4人の男たちを順番に見回す。正直、どの家政夫も皆優秀だと思った。誰を選んでもきっと彼らなりの方法で役に立ってくれるのだろう。悩む彩響の頭に、ふとある考えが思い浮かんだ。


(いや、一応男をハウスメイトとして受け入れる訳だから、なるべくそういう危険度が低い人を選ぶべきなのでは?)


元カレのこともあるし、結婚とか恋愛とか、もうとっくにうんざりしているけど、とりあえず面倒くさいことになるような要因は無くしたい。そうすると、やはり最も歳が離れている人が適切だと思う。

元カレもあれだけ「俺が年上だから言うことを聞け」と言ってたくらいだし…。雇い主の立場でいるならやはり幼くて、こっちの言うことに素直にうなずいてくれて、自分のコントロールが上手くできそうな人がいいはずだ。彩響は心を決め、4人の中で一番若い人の前に立った。


「雛田林渡、あなたが良いです。」

「やったー!」

雛田くんが両手を上げ、まるでなにかの試合で優勝したかのように喜んだ。喜ぶ姿もまだ幼いなーと思っていたら、隣にいた河原塚さんの声が聞こえた。


「なんだ、林渡かよ。本当にこいつでいいの?」

「まあまあ、そんなこと言わずに。峯野さん、林渡は料理の腕だけは確かですので、これからきっと役に立ちますよ。」


自分が選ばれなかったことにぶつぶつ文句を言う河原塚さんを、隣にいた今瀬さんがフォローする。仲がいいのか、悪いのか…。その瞬間までなにも言わずに立っていた三和さんも彩響に向かってぺっこり頭を下げた。


「では、お決まりのようですので、失礼します。林渡をよろしくお願いします。」

「あ、はい。ありがとうございました。」

「林渡、くれぐれも峯野さんの役に立つような仕事をしてください。」

「なに言ってるんだよ、心配ないよ、任せて!だって、彩響ちゃんと俺、もう仲良しだから。」


そう言う雛田くんはとてもはきはきしていて、相当嬉しそうに見える。いや、まあ就職できたことは嬉しいことだとは思うが、なにもそこまで…。そんなことを考えていると、Mr. Pinkが白い紙を出した。