「ちょっと待って、それって私も知っている話?」


瑞穂の前置きを聞いて美聡は口を挟んだ。


すでに知っているような怖い話じゃダメなのだ。


「たぶん知らないと思うよ。今の前置きは怖さを助長するための作りものだから」


なんだ作り物だったのか。


ホッとすると同時に、じゃあどんな怖い話なのだろうと緊張が走る。


思わずゴクリとツバを飲み込んでしまった。


「この学校ではね、放課後1人で残っていてはいけない教室があるって言われているの。その教室に1人でいるとね、赤いハンカチが床に落ちているんだって。あれ? どうしてこんなところにハンカチが落ちているんだろう? そう思ったとき廊下を歩いていく女子生徒の姿が見えるんだって。あ、あの子が落として行ったのかな。そう思ってハンカチを拾って追いかけるでしょう? するとね……」


瑞穂がグッと顔を寄せる。


美聡はすでに青ざめていてそこを動くことができない。


「廊下の走っていた女の子が突然振り向くの。その顔は血まみれで鼻と目がなくて、両手を差し出してくるんだって。そのハンカチ、私の血で真っ赤になったのよ。そう言いながら体を掴まれて別の世界に引きずり込まれるんだって!」