それでも母親はずっと笑っていて、美聡を見ようともしない。


次第に恐怖心が湧いてきた美聡は「お母さん!」と、大声を出した。


その瞬間、母親の笑い声がピタリと止まった。


リビングに怖いほどの静けさが降りてきて、美聡は強く身震いをする。


「あら美聡、帰ってたの?」


さっきまで床に転がって笑っていた母親は、何事もなかったかのようにケロッとした表情で起き上がった。


「う、うん。お母さんなにをしてたの?」


「今日近所の人に教えてもらったのよ。笑うことが健康にいいって」


言いながらソファに座り、テレビをつける母親。


「で、でもなにもないのにあんなに笑って……」


「それがね、作り笑いでもいいって言うの。だから試しにやってみたら笑っていることがおかしくて、本当に笑い始めちゃってね」