「ただいまぁ」


白い壁の小さな一軒家の玄関を開けて声をかける。


リビングから母親の笑い声が聞こえてきて美聡へそちらへ足を向けた。


1人でテレビでも見ているんだろう。


そう思ってリビングのドアを開けたのだが、目に飛び込んできたのはなにもついていないテレビと、1人で笑い転げている母親の姿だった。


母親は目に涙を浮かべて床に転がって大笑いしている。


そんな姿の母親なんて見たことがなくて、美聡はその場に立ち尽くしてしまった。


どうしたんだろう?


なんでこんなに大笑いしているんだろう?


なにがそんなにおかしいの?


次々疑問が浮かんで来るけれど、驚きすぎてどれも声にならなかった。


リビングにはただただ母親の狂気めいた笑い声が響いている。


母親は美聡が帰ってきたことにも気がついていないようで、まだ笑い転げている。


「お、お母さん?」


ようやく母親に近づいてそう声をかける。