冷たい空気が動くことなんてないのに。


気がついてゾッと背筋が寒くなったとき、直人が仕切り直すように居ずまいを正した。


それによってみんなの視線がセナから直人へ移動していく。


セナはまださっきの現象の話をみんなにしたかったけれど、黙り込んでしまうことになった。


「これで2つ目の怖い話は終わった。次は誰が話す?」


直人の言葉にまた沈黙が降りてきた。


少し待ってみても誰も手をあげようとしない。


「美聡、大丈夫だから手をあげてみて」


セナは小さな声で隣の美聡に声をかけた。


「でも……」


怖い話を集めることも、みんなの前でそれを発表することも緊張する。


でも、自分でもできたのだ。


美聡にだってきっとできる。


「大丈夫。私もフォローするから」


そう言うと美聡はようやく右手を上げた。


みんなの視線を受ける美聡は少しうつむいて「次は、私が探してくる」と、言ったのだった。