怖くて、とにかく返事がほしくて次々と質問を投げつける。


そんな直人の手を剛は握りしめた。


「いや、そんなことはありえない。あの事件はもう解決しているんだから」


「でも、じゃあさっきのは!?」


「もう1度、確認してみよう」


剛の言葉に直人は目を見開いた。


「またあのロッカーを見に行くの?」


思い出すのは白い手。


一瞬しかみなかったけれど、それは直人の脳裏に鮮明に焼き付けられている。


白くて細い手は血管が浮き出していて、皮膚はところどころ黒く変色して剥がれていた。


爪はボロボロで血が滲んでいたかもしれない。


思い出すだけで怖くて涙が滲んできそうになって、直人は必死に目の奥に力を込めて涙を押し戻した。


「少しだけ、一瞬だけな」