こんどはハッキリとロッカーが開くキシミの音だと気がついた。


目の前のロッカーにできた隙間からヌッと白い手が除く。


それが見えた瞬間、直人と剛は同時に走り出していた。


悲鳴を上げることもできず一気に駅から外へと駆け出す。


それでも勢いは止まらず、駅の横にある公園に入ってようやく足を止めた。


「み、見た!?」


膝に手を当てて呼吸を整えてから直人は聞いた。


「あぁ、見た……」


剛は額に汗をにじませて返事をする。


普段野球で鍛えている剛だから、走ったことでかいた汗ではなく冷や汗なのだとすぐにわかった。


「手、手が見えた!」


「あぁ、見えた」


「あれが話してくれた人? まだあのロッカーにいるの?」