しおりにそれ以上近づくことも、声をかけることもできずに呆然と立ち尽くす。


これがしおりだなんて信じられなかった。


ついさっきまで笑顔を浮かべていたしおりだなんて……。


それから救急車が到着して、しおりは運ばれていった。


わたしたちの親にも連絡が行き、それぞれに迎えが来た。


一緒に病院へ行くこともできない。


わたしたちは本当に無力だった。


だから、直人があのリアルチューバーの動画を見せてきたとき、わたしたしは全員しおりのことを思い出していた。


死者を呼び出すことのできる儀式。


呼び出したいのはしおりで間違いがなかった。


だからこそ、ここまで心をひとつにしてやってくることができたんだ。


「あのモヤが、しおりなら……」


そう呟いた時、一瞬だけ違和感が胸を刺激した。