車は急ブレーキ音を響かせるが止まることができず、しおりの自転車を踏みつけた。


赤い自転車がグチャグチャに歪んでいくのを見た。


道路に叩きつけられたしおりは無理矢理起き上がって歩道へ戻ろうとしている。


けれどそこに来たのはバイクだった。


急ブレーキをかけた車の横をすり抜けようとしたバイクがしおりの体を跳ね飛ばした。


バイクが横転し、運転手が空中を舞う。


横滑りをしたバイクがしおりの体に激突して停止した。


みんな、なにも言わなかった。


今見た映像が現実のものだなんて信じられなかった。


騒ぎを聞きつけた野次馬たちが集まってきて、ようやく直人が自転車を投げ出した。


『しおり!!』


それに続いてわたしたちもしおりに駆け寄った。


しおりはコンクリートの上で目をつむり、地面は赤い血で染まっている。


見た瞬間わたしの体は凍りついてしまった。