☆☆☆

かつてこれほど鳥肌がたった経験はなかった。


おばさんの話を聞き終えた後、何度も強く身震いをした。


「やっぱり腕が鈍っているわねぇ」


おばさんはお茶を美味しそうに一口飲んでつぶやく。


浩には全然腕が鈍っているようには感じなかったけれど、おばさんはあまり満足のいく出来ではなかったみたいだ。


「でも、こんな話でよかったの? もっと幽霊とかが出てきたほうが良かったんじゃない?」


「いえ、大丈夫です」


浩は顔の前で手を振って答えた。


この上幽霊の出てくる怖い話までされることになったら、今日はひとりで寝ることができなくなってしまう。


「浩、顔が真っ青だけど大丈夫か?」


「だ、大丈夫だよ、このくらい」


強がって言ってみたけれど、外はもう真っ暗でひとりで帰れれる気がしなかった。


玄関先まで出てきて立ち尽くしていると俊明が「家まで送ってやる」と、笑いを噛み殺して言ったのだった。