剛が泣きながら野球のポスターを剥がしたことで、もう野球を二度とやらないのかと思った。


「そのためにも、絶対に受験を成功させないといけない」


剛の表情が引き締まり、拳が握りしめられた。


直人よりも一回りほど大きな拳には血管が浮き出て、本気だということがわかった。


「受験に失敗したら、どうなるの?」


そんなことはありえないけれど、つい聞いてしまった。


なにかただ事ではない雰囲気を剛から感じ取ったから。


「……野球ができなくなる」


「え?」


直人はまた目を丸くして直人を見つめた。


「そういう約束なんだ。やっ給が強い学校に入学できなかったら、もう野球はやめて勉強に専念するって」


「でも、野球部のある学校に入れば野球は続けられるよね?」


直人の質問に剛は悲しげに眉を下げた。


「そうだな。でもダメなんだ。両親は本当は俺にもっと勉強をしてほしいと思ってる。毎日の部活だけじゃなく朝練や休日も集まって部活動をすることを、本当はよく思ってないんだ」


「そんな……」


直人は剛の両親を思い出した。