壁は真っ白で、ポスターがあった場所だけ少し色が変わっていた。


「どうしたの剛兄ちゃん。野球のポスターは!?」


「大丈夫だよ、一旦片付けただけだから」


「片付けたって、どうして!?」


剛は小学校低学年のころからずっと野球をしていて、高校に入っても続けるのだと聞いていた。


「こう見えて俺も受験生だからな。中学の部活はもう引退したし、しばらくは受験に専念しないといけないんだ」


剛はそう言って笑った。


その笑顔はやっぱり寂しそうに見える。


「受験が終わったらまた野球やるの?」


「もちろんだ! 学校だって、野球が強いところに入学する」


「そっか」


それを聞いてホッとした。