これだけ莫大な量の本がある中で、こうして一冊の本を手に取るのは奇跡に近い出会いだ。


真紀はその本を胸に抱きかかえるようにして移動し、窓際のテーブルに座った。


窓から差し込む光が眩しくて半分までブラインドーを下げる。


本の表紙を開く瞬間、真紀の心は一番ドキドキしている。


これからどんな物語が始まるのか。


自分はどんな世界に連れて行ってもらえるのか。


そう考えただけで遠足へ行く前日のような気分になってくる。


そしてほんの表紙を開くと一瞬でその世界へ入り込むことができるのだ。


真紀は口元に笑みを浮かべて、都市伝説の本の表紙を開いたのだった。