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「……な? 怖い経験ができてよかっただろ?」


駅の近くの公園にやってきてどうにか気持ちが落ち着いてから、実はそう言った。


顔は真っ青だし体はガタガタ震えていて、強がりを言っているのがよくわかった。


実が掴まれた右腕には手形はクッキリと残っていて、今でも痛そうだ。


和輝は返事をせずに自動販売機で買ったコーラを一口飲んだ。


いつもの飲み慣れた味にホッと息を吐き出す。


でも、あの腕は一体なんだったんだろう?


直人の話は本当だったとして、その幽霊が今でもあのロッカーにいるってことだろうか?


考えてゾッとした。


今まで4つの怖い話を聞いていたけれど、その関係者たちの幽霊が全部この街にいたとしたら?


想像しただけで恐ろしくて、ブンブンと頭をふってその考えをかき消した。


しばらくベンチに座って休憩したあと、実が「よしっ!」と声を上げて立ち上がった。


顔色は随分と良くなっている。