みんなの顔は青くなっていて、アズサは微かに震えている。


「そういうのやめよろ」


「あぁ、悪い」


いつまでもあたまにナイフを突き立てられていた和輝が仏頂面になって実の手を払い除けた。


「今の感じで良かったんだよな?」


和輝以外の全員が無言のままでいるのが急に不安になり、実は直人へそう聞いた。


直人は何度も頷いている。


そっか、よかった。


ようやく自分がちゃんと話を終えることができたのだとわかり、ホッと胸をなでおろす。


と、そのときだった。


冷たい風が頬をなでた。


夏とは思えない、冷え切った風だ。


それはまるで手のように実の頬、そして首筋を這う。