帰宅した勢いで質問してしまったけれど、失敗だったかもしれない。


「怖い話なんてお母さんが知っているはずがないでしょう? どうしてそんなことを聞くの?」


そう聞き返してくる母親の眉はすでにつり上がっていて、怒りのゲージが上がり始めていることがわかった。


なにも悪いことをしていないのに怒られるなんて理不尽だ。


直人はすぐに作り笑顔を浮かべて「ううん、なんでもないんだ。ちょっと聞いてみただけ」と、早口で答えた。


それでも怪訝そうな顔をしている母親の横をすり抜けて階段を駆け上がり、手前の自分の部屋に飛び込んだ。


少し乱暴にドアを締めてふーっと大きく息を吐き出す。


危うく母親の機嫌を損ねて怖い話を聞き出すどころではなくなってしまうところだった。


直人はかばんを床に投げ出してベッドに寝転んだ。


白い天井を見上げてリアルチューバーの言葉を思い出す。


8人で1つずつ怖い話を披露していく。