藤本の事は警戒していたのに…… あいつが勤める会社の研修にと、凛嶺旅館を口利きをしたのは乃々夏だ。どうせ県警から要請があったのだろう。だから元々罠に掛けるつもりで呼び込んだとしても、朔埜に否やはない。けれど史織が来る事は知らなかった。 怒りはある。 それは自分に対するもの。 目を逸らしていたせいで大事なものを危険に晒した。 そしてこんな後悔はもうできないと、やっと悟った。 気付くのが遅くなったけれど、言わなければならない。もう自分は乃々夏を幸せには出来ないから。