「はい、有給使わないと消えちゃうんで」

「そうだな、そう言えば真壁に連絡したか?」

急に本郷部長から真壁くんの名前が出てきてしどろもどろになってしまった。

「あ、はい、いえ、あのう……」

「そう言うことか、真壁に会いに行くのか」

「ち、違います」

私は真っ赤になって、言葉は否定しているのに、そうですと言っている態度が出てしまった。

「そうか、そうか、行って来い、アメリカ」

「本郷部長、だから違いますから」

本郷部長は声高らかに笑っていた。

真壁くんの住んでいるマンションは電話で教えて貰っていた。

急に押しかけたら大変なことになるとは、この時は夢にも思わなかった。

ただ、真壁くんに会いたい一心で他の事は考えられなかった。

アメリカに着くと、まず真壁くんのマンションに向かった。

いきなりインターホン押したらびっくりするかな。

この時まさか奈落の底に落とされる思いをするなんて、私は浅はかだった。

エレベーターから降りてくる一人の男性を目視した。

真壁くん!