藤田さんは一瞬驚いた様子で目を見開き、そしてうなづいた。


やっぱり悲しそうな顔をしている。そんな顔の藤田さんを見ていると、さっきまでモヤモヤしていた香織の胸は今度はズキズキと痛くなってくるのだ。


「それってもしかして、物じゃなくて、生きていたりしますか?」


香織は緊張気味に質問をした。


今朝広場で探し物をしていたときは、なにかを落としたのだと思った。


けれどビーチで海水浴客を見て今みたいな悲しい顔をしていたことのほうが印象深かった。


だから、探しているのは人ではないかと思ったのだ。
「うん、そうだね」


藤田さんは遠い目をしたまま、うなづいたのだった。