砂浜から離れて帰路を走るキッチンカーの中で、藤田さんはやけに静かだった。


「今日はお客さん多かったですね」


「あぁ、そうだね」


「でも、沢山売れてよかったですね」


「あぁ、そうだね」


香織が何を言っても上の空だ。


仕事が忙しかったから疲れたんだろうかと、その横顔を盗み見る。


藤田さんの表情はどこか悲しそうで、香織は今一緒にここにいるのにここにいないような気がして落ち着かない気分になった。