「う~ん、わからないな」


どれだけ頭を悩ませてみても、そんなお化けは見たことも聞いたこともない。


「もしかしから、お化けじゃなくて化け物だったのかも」


「化け物?」


「うん。だって、幽霊だったら海に浮かんでるような気がするんだ」


そういわれて香織は瞬時に海の上に浮かぶ女の幽霊を想像してしまった。


ぐっしょりとぬれた黒くて長い髪の毛。


海の上を歩く足は透けていて、体も半分くらい透けている。


自分の想像にゾクリと背筋が寒くなったところで、香織は岬くんの手を握って歩き出した。