キャンプ場でぬいぐるみを見つけることができたのはただの偶然だと言われると思っていた。


だけど藤田さんは違う。


ちゃんと香織の才能を買ってくれていたのだ。


それが嬉しくてすぐに駆け出した。


砂をけり、青ざめている男の子に近づいていく。


その迫力に気圧されたように男の子がギョッとした表情を浮かべて足を止めた。


「その話、もう少し詳しく教えてくれる?」


男の子は警戒するような目を香織に向けたが、キュッと唇を引き結んでうなづいたのだった。