もしかしてウサギにも小さな子供がいて、その子がほしがったんじゃないかと思う。


だとしたら、香織は子ウサギのオモチャを奪ってしまったことになるのだ。


「そんなに心配しなくて大丈夫。ウサギは野生の生き物だから、きっと遊び上手だよ」


「そうなの?」


「あぁ。どんなものでもオモチャにしてしまう。時には人間のオモチャに興味がわくかもしれないけれど、ウサギにとってはこの森全部が遊び場所だ」


「この森全部が……」


それってとても素敵なことだ。


香織が暮らしている町全部が遊園地だったら、きっと寝る暇も惜しんで遊んでしまう。


「そっか。それなら大丈夫なんだね」


「そういうこと」


藤田さんはうなづき、香織を助手席へ乗せた。