「いらっしゃいらっしゃい! 安くておいしいクレープだよ!」



香織はキッチンカーの前で旗を振って客寄せしていた。


その姿はまるで屋台のお姉さんだ。



お兄さんはキッチンカーの中でクレープ生地を焼きながらその様子を見ている。


「はいはい、列は真っ直ぐね! あ、押さないで! 危ないからね!」


お兄さんのクレープはどこへ行っても人気らしくて、ここでもすぐに列ができていた。

 広間と違うところは家族連れが多いこと。小さな子供たちは好き勝手列からはなれてしまうから、それを注意することに忙しかった。
 一時間ほど手伝いをするとようやく列がはけてきた。