香織はエプロンから手を離して呆然としてしまう。


あの花火大会以来藤田さんとは会ってない。


もちろん、気まずすぎてこちらから連絡を取るようなこともできていなかった。


本当はもっとちゃんと謝らないといけないと思っていたのに。


そこまで考えた香織は弾かれたように立ち上がり、一目散に自分の部屋へと駆け上がった。


母親が後ろから文句を言ってくるけれど、返事をする暇などない。


こうしてはいられない。


香織はまだパジャマ姿のままだったのだ。


もう昼も過ぎているというのになんのやる気もでなくて、ずっとゴロゴロしていた。


藤田さんが来るのにこのままの格好でいいわけがない。



香織は押入れの中の箪笥を開けてワンピースを引っ張り出した。


これはちょっとオシャレを意識しすぎているかも。