苦しくて咳き込んでいると掃除機をかけていた母親がスイッチを止めて呆れた表情を向けた。


「なにしてんのよ。今日は藤田さんが来るっていうのに、そんな格好をしていていいの?」


母親の言葉に香織は一瞬意味がわからず、反応ができなかった。


今、藤田さんが来るって言った!?


「藤田さんって、あの藤田さん!? キッチンカーの!?」


驚いて声を上げて母親のエプロンと掴む。


母親はキョトンとした表情になり「あれ? 言ってなかったかしら?」と、首をかしげた。


「聞いてないよ! ねぇ、どうして藤田さんがうちに来るの!?」


「あんた藤田さんの探し物の手伝いをしてあげたんでしょう? 無事に見つかったからそのお礼をしに来るんだって」


そうなんだ……。