香織は畳の部屋で寝そべり、ジュースとお菓子を交互に口に入れていた。


「ちょっと残り少ない夏休みなのになにしてんの」


掃除をしにきた母親が呆れた声を上げても、動く気分になれない。


「いいじゃん。宿題終わったんだし」


「そういう問題じゃないでしょう? なにかないの? 遣り残したこととか」


やり残したことと言われて思い出すのは藤田さんのキッチンカーだ。


藤田さんは今日もどこかでクレープを売っている。


きっと大盛況で、行列ができていると思う。


それでキッチンカーの中で一生懸命働いているのは、香織じゃなく、藤田さんがずっと探していた女性。


二人は仲良くキッチンカーの販売を続けていて――。


そこまで考えて強く頭をふって想像をかき消した。



上半身を勢い良く起こしてお菓子を口に放り込み、喉に引っかかってむせてしまう。


「ごほっごほっ!」