花火の明かりが消えたと同時に神社は暗闇に包まれた。


周囲に街灯はなく、境内に明かりがともることもない。



こんな時間に外でひとりでいたことがない香織は両手で自分の体を抱きしめた。


拝殿へ視線を向けると今にもあちこち崩れ落ちてきそうな気配が漂い、戸が開いて化け物が出てくるんじゃないかという想像が香織を突き動かした。


勢い良く立ち上がり、石段を駆け下りていく。


元々花火は第一部を見たら帰らないといけない約束だ。


花火が終わればお手伝いも終わり。


今日はもう帰ってもいい。


自分に言い聞かせて石段を下っていたとき、スピードが出すぎて止まらなくなった。


「わっ! ちょっ!」