河川敷から少し外れた場所に小さな神社があった。


古びていていつ崩れ落ちるかわからない神社には誰も近づかない。


香織はその石段に座って花火を見ていた。


しっかり見たいのに、空に咲花は涙で滲んでどれも歪んで見える。


ぬぐってもぬぐってもこぼれてくる涙の正体はつかめなくても、胸の中に穴が開いた感覚は理解できた。



藤田さんの探し人が見つかった瞬間、香織の胸にはその大きな穴が出現していた。



ひとりでそうしていると不意に花火が止まった。


第一部終了のアナウンスが会場から流れて聞こえてくる。