昔ながらの日本家屋に、大きな庭。


縁側から見る空は青く、大きな入道雲が浮かんでいる。


「おかあさ~んっ!」


立派な日本家屋の中に女の子の大きな声が響いた。


続いてドタドタと廊下を走る音。


素足で廊下を走ってキッチンへ続いている戸を行きおいよく開いたのでは川端香織。


この家の一人娘だった。


昨日から夏休みに入った香織はジーンズのショートパンツに、黄色いタンクトップ。


右手には赤いリボンのついた麦藁帽子を握り締めている。


「ちょっとなに? 宿題してたんじゃなかったの?」


昼ごはんの準備を進めていた香織の母親は騒々しさに目を丸くして振り向く。


香織の持っている麦藁帽子に目をとめて「出かけるの?」と、聞く。


「うん! そこの広間、今日キッチンカーが来てるんだって!」


香織はそう言いながら母親の横にたち、お皿に並んでいるカラアゲを一個つまんで口に入れた。