帰宅した私は、荷物を整理して、3週間ほど留守にしていた部屋を掃除する。

そして、2時間後、私は待ち切れずに再び慎也くんのアパートへと向かった。

もしかしたら、意外と道が空いていて、少し早く着くかもしれないし。

私は、慎也くんのアパートの前でドアにもたれながら、今か今かと慎也くんを待つ。

会えると分かっている1時間は、長いけれど、不思議と昨日までの不安が消えて、喜びの方が大きい。

慎也くんのことを思うだけで、胸の奥がキュンと締め付けられるけれど、幸せな胸の高鳴りを感じる。

1時間後、階段を駆け上がる足音が聞こえる。

私が階段に目をやると、息を切らせた慎也くんが現れた。

「慎也くん!」

私が駆け寄ると、慎也くんは突然、何も言わずにぎゅっと私を抱きしめた。

えっ?
うそっ!?

私は、慎也くんの腕の中で、どうしていいか分からず、ただ立ち尽くしていた。

「里穂ちゃん、会いたかった……」

私の頭に頬を寄せて、慎也くんが呟く。

「写真、見たよ」

写真?

突然、切り出されて、一瞬、何のことだか分からず、固まってしまった。

「里穂ちゃん、元カレとよりを戻したの?」

そう聞かれて、ようやくSNSの同窓会の写真のことだと思い至った。

「あ、あれ……」

私は、なんて言い訳をしようかと頭をめぐらす。

よく考えれば、付き合ってるわけでもない慎也くんに言い訳をする必要なんてないんだけど。

「俺、もう遅いかもしれないけど、里穂ちゃんが好きだ。振られて気まずくなるくらいなら、このままでいいって思ってたけど、やっぱり、他のやつに渡したくないんだ」

えっ?

今、なんて……

私は、慎也くんの腕の中で身じろぎをして、顔を上げる。

「あの、慎也くん?」

すると、少し腕を緩めた慎也くんと目が合った。

「里穂ちゃん、俺じゃダメか? やっぱり、あいつが好きなのか?」

心配そうに見下ろす慎也くんは、いつもの明るい慎也くんとは、どこか違っていて、胸がキュンと締め付けられた。

私は、黙って首を横に振る。

「違うの。あれは、酔った勢いというか、あんまりよく覚えてなくて……」

後で自分でびっくりしたくらいだもん。

「じゃあ、よりを戻したわけじゃ……」

慎也くんは、私の髪をスーッと撫でる。

「違うよ。だって、私が好きなのは……」

慎也くんって言いたいのに、言葉にならない。

私は黙ってただ慎也くんの腕の中から、慎也くんを見つめる。