ひまわりが枯れるとき、ライオンは…

検査入院の期間が終わっても、高野さんは学校に戻ってこなかった。

メッセージを送っても、返事がない。

病院にノートを届けても、看護師さんに預けることしかできず、高野さんには会えなかった。

容態が悪化したのだろうか。

俺はなんだか怖くなった。

高野さんに会いたい。

会って安心したいのだ。

今日もどうせ会えないと思いつつ、高野さんにノートを届けに病院に向かった。

「小山さん。」

「あ、獅子谷くん。陽葵李ちゃんのノート?」
 
「はい。今日も、面会はできないですか?」

「できるよ。届けてあげて。陽葵李ちゃん喜ぶと思う。」

「ありがとうございます。」

とりあえず、高野さんが無事ってことはわかった。

ほっとしたと同時に、少しムカついた。

無事ならメッセージ返してよ。

どれだけ心配したと思ってるんだよ。

高野さんのバカ。

…これは、少し言い過ぎだな。

「高野さん、獅子谷です。入っていい?」

『どうぞ。』

病室に入ると、いつもと変わらない高野さんがいた。

「はい、今日のノート。」

『いつもありがとう。助かってます。』

「…。」

『…。』

「…えっと。」

『なんか、久しぶりだね。』

「…そうだね。入院長引いたの?」

『まぁ、そんな感じ。』

「…えっと、なんていうか、具合悪かったの?」

『いや、そうでもないよ。』

「だったら…連絡して欲しかった。」

『そういえば、メッセージ送ってくれてたよね…ごめんね。』

「いや、謝らなくていいよ。その…無事が確認できたから、良かったし。」

『…心配してくれたんだ。』

「…そりゃするよ。」

『なんか、嬉しい。』

「そうですか。」

『最近、学校どう?』

「なんか、文化祭の準備始めてるよ。」

『うちのクラス何やるの?』

「童話カフェだって。」

『童話カフェ?』

「うん、なんか、童話の登場人物のコスプレして接客するらしい。」

『なにそれ、すっごく楽しそう!』

「準備は盛り上がってるよ。」

『獅子谷くんはなんのコスプレするの?』

「まだ、決まってないよ。」

『童話だよね…何が似合うかな?』

「考えてくれるの?」

『ちょっと待ってね…やっぱり、ライオンかな?』

「ライオン?なんかの童話に出てくるっけ?」

『オズの魔法使い。』

「なんか、聞いたことある。」

『そこに出てくる臆病なライオンがいいんじゃないかな?獅子谷くんもともとライオンぽいし。』

「確かに。臆病なライオンなら合ってるかも…。」

『そのライオンはね、自分のこと臆病だって言ってるんだけど、本当は優しくて勇気を持ってるんだよ。』

「あ、なんか思い出した。」

『何を?』

「俺が小さいとき、母さんが読んでくれた気がする。オズの魔法使い。」