ひまわりが枯れるとき、ライオンは…

「…入るよ、高野さん。」

『はーい。』

次の日、俺は約束通りノートを直接高野さんに届けた。

『話したいことあるから座って。何か飲む?ジュースなら、冷蔵庫にあるんだけど。』

「…いや、大丈夫。お気遣いどうも。」

『あのね、獅子谷くんに見せたいものがあるんだ…。』

そう言って、高野さんは1冊の厚めの手帳を取り出した。

『これ、お兄ちゃんが書いてた日記なの。』

「…優真くんが?」

『うん。獅子谷くんと会った日から書き始めてあるんだ。見て。』


ー今日、初めて生徒ができた。癖っ毛の可愛い生徒だ。この日記への出演許可はとっていなかいから、ここではライオンくんって呼ぶことにする。俺が、初めて先生をしたときのことを忘れないように、この日記に記録することにする。


『私ね、これ、ライオン観察日記って呼んでるんだ。』

「…ライオン観察日記?」

『うん。獅子谷くんのことばっかり書いてあって、観察日記みたいなんだもん。』

高野さんが言った通り、優真くんの日記には、俺が頻繁に登場していた。



ーライオンくんのは勉強がかなり遅れているようだ。もっと、わかりやすく教えるために僕ももっと勉強しないと。




ーライオンくんに理解できたかを確認すると、毎回「できました。」と言われる。本当に、理解できているならいいのだが…もっと心を開いてもらえるように頑張るぞ!




ー今日、ライオンくんが初めて僕に質問をしてくれた。ものすごく嬉しくて、泣きそうになってしまった。ライオンくんに心配されちゃった。ライオンくんは優しいな。




ー今日は、予定したよりも早く勉強が進んだから、次回のところも教えることにした。ライオンくんの集中力はすごい。教えたことも確実に身についている。この調子なら、もうすぐみんなに追いつくぞ!頑張ろう!



『…獅子谷くん、大丈夫?』

「…え。」

高野さんに言われて、俺は自分が泣いていることに気がついた。


「ごめん、なんでだろ。なんか…勝手に。」



『…この日記、私が死んだら獅子谷くんにあげるね。』

「…え、なんで。」

『獅子谷くん観察日記だから。他に何書いてあるか興味ない?』

「…それは、あるよ。」

『でしょ?言っとくけど、これ、まぁまぁ長いから、私が死んでも獅子谷くんすぐには死ねないからね。』

「…わかった。」

『私が死ぬまで待たなくても、私と会ったときには少しずつ見せてあげから。』

「…うん。」