「…あったーーっ!」
奥の部屋から聞こえた鍛治くんのお母さんの大きな声に、ビクっと肩が上がってしまう。
そしてドタバタと戻ってきては嬉しそうな表情をしていた。
「どうしたの?」
呆れた顔でそう返す鍛治くんがまた新鮮で好き。
「これ!天野ちゃん着て行かない…!?これから夏祭り行くんでしょ?」
そう言って鍛治くんのお母さんが、私の前に持ってきたのは、矢絣模様の入った古典柄の浴衣だった。
「ココちゃんにも浴衣着せようとしてたんなら、みんなで一緒に着て行きなよ。優くんもパパのあったしさ。
お揃いにしていきな?そっちのほうがぜーったい楽しい!気持ち的にもね!」
「俺はいいって。天野さんも無理しなくていいからね…?」
「あの……私、着てもいいかな…?」
実は夏祭りと聞いて、私も浴衣を着て行こうか迷っていた。
けどデートでもなく、ただお呼ばれしただけなのに着ていくのは大袈裟かもしれない…と思って結局やめたんだ。
「ほら、天野ちゃん着たいって!パパのも持ってきたげるから、優くんも着なさいっ」
半ば強引に鍛治くんも浴衣を着ることになり、鍛治くんは自分と心音ちゃんの着付け、そして私は鍛治くんのお母さんに浴衣を着せてもらえることになった。