魔力無しだと追放されたので、今後一切かかわりたくありません。魔力回復薬が欲しい?知りませんけど

 手に小瓶を持ったまま立ち上がる。どこもいたくないどころか、最近ひどかった肩こりまでも治っている。
『霊薬エリクサーなら、命さえあれば何でも直しちゃうから。そりゃ痛いくらいあっという間に治るさ』
 霊薬エリクサー?
 ファンタジーゲームや小説に出てくるあれ?この真っ黒な墨汁もどきが?
 驚いて声の主に顔を向ける。
 遠くからじゃはっきり姿が見えなかった幽霊の姿。というか、目が節穴になっていたり直視しがたい姿の場合もあるので見ないようにしていた姿を5mほどの距離からばっちり見てしまった。
「う、げ……」
 ――幽霊は、無駄にイケメンだった。

 眉目秀麗って単語はこういう人に使うんだろうと思った。人生に置いて初めて眉目秀麗な男に出会った。って、幽霊だよっ!ってことは人生においてまだ眉目秀麗な男の人には出会ってないってことだ。
 深い青の瞳。二重でまつげも長い。鼻筋は通って、彫は深いけれど、深すぎない。細い顎に賢そうな額。金の髪は、前髪は短め、サイドと後ろは少し長めだ。口元はふっくらしているけれど、女性的ではなく男性らしい引き締まり方をしている。
「せっかくのイケメンなのに……」
 憐れむような目で見る。
 幽霊だから、私のようにこの美しい姿を目にできる人は少ないだろう。さらに、こんな人気のない荒野の地縛霊じゃぁ、さらに人が目にすることはなさそうだ。っていうか、そもそも、年齢は30歳前後だろうか。こんなイケメン盛りに死んじゃったなんてかわいそうすぎる。
『あー、何だ、その目は?』
「何でもないです。あの、これ、ありがとう」
 小瓶に蓋をして、幽霊に差し出す。
『いや、返さなくてもいい。どうせもう僕には使えないから……もらって。あ、そうだ、もらってといえば、そっち、その辺も掘ってくれないか?』
 ふと、花さか爺さんのここ掘れわんわんを思い出した。
 掘れと言われれば、まぁ、エリクサーのお礼もありますし、彫りますが……。手で掘るのは割と大変で、何かないかな?
 スコップなんて贅沢は言わないけれど、木の棒でもあれば……。
 幽霊の足元を見ると、いいものを発見。
 足元に落ちていた鞘に収まった剣を持ち上げて、示された場所をがつがつと剣でつついた。
『あー、あー、あー、やめて、やめて、やめてー』
 うるさいなぁ。